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(No.5964)廣嶋玲子「青の王」/アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム「制裁」/宮内悠介「スペース金融道」

2017.05.28 (Sun)


(ニオイバンマツリ:上品な香りがすてきでした:市内)

好きなことだけを追いかけているはずの日々でした。
先日、朝から立てないほどにめまいに襲われました。吐き気がして食事もできません。前に経験のある「良性突発性めまい症」かと思い、耳石を動かすストレッチをして様子を見ました。1日目はスープだけ。2日目はいくらか軽くなり、日を追うごとに軽くなりました。耳鼻科に念のため行こうと思っています。
内科で処方してもらっている咳の薬が切れたので、優先しました。咳と、熱くなると動悸がすると伝えると、診察の上で汗が出にくくなっていないかと聞かれました。確かに25度を越える日に外出しても、さほど出ません。全身ぐっしょりで着替えを全部洗濯機に放り込んでいたのに。汗の出る漢方薬を処方してもらうと、少しづつ汗が戻ってきました。原因は自律神経がストレスや過労で働きが悪くなるということです。やれやれです。

今回は3作です。
廣嶋玲子「青の王」
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム「制裁」
宮内悠介「スペース金融道」

「青の王」砂漠に咲く奇跡の都ナルマーン。王宮の上空では翼をもつ魔族が飛び交い、水が豊かで魚や竜の姿をした魔族が泳ぐ。王は神に選ばれ、魔族を操る力を持つ。孤児の少年ハルーンが出会ったのは、不思議な塔に閉じ込められた少女だった。自分の名前も知らない、青い血を持ち「贄の子」と呼ばれ魔法の足かせをかけられた少女を助け、ハルーンは塔を脱出する。だが彼らを、魔族と王宮軍が追いかけてくる。

広がりのあるファンタジィで、美しいアニメを見ているような映像的な描写が好きです。醜悪な王宮族や魔族たちも、助けてくれた空を駆ける船を操るアバンザの毅然とした姿も、ストーリー展開もいいです。楽しめます。この作者には是非、大人の物語も書いてほしいです。

「制裁」幼女殺害犯が護送中に脱走した。市警のグレーンス警部は懸命にその行方を追う。一方テレビの報道を見た作家フレドリックは凄まじい衝撃を受けていた。見覚えがある。この犯人は今日、愛娘の通う保育園の近くにいた。彼は我が子のもとへと急ぐが間に合わなかった。警察の力を信じられず、さらに反抗を重ねると考えたフレドリックは復讐を誓う。法が裁くか、私人が捌くか。法廷も揺れる。

展開の早い悲惨な事件ですが、説得力があり事件や裁判のあとまで丁寧な書き方に、共感しました。父親の思いもわかる。市民のひとつの方向に向かう怖さもある。法側の苦悩もある。囚人たちの状況や思考も伝わる。なにより父親がどうなっていくのか。読後も考えさせられる作品でした。

「スペース金融道」人類が最初に移住に成功した太陽系外の星、二番街。ぼくは新生金融の二番街支社の債権回収担当者で、大手があまり相手にしないアンドロイドが主な客だ。直属の上司ユーセフは、普段はいい加減で最悪なのに、たまに大得点をあげて挽回する。貧乏クジを引かされるのは、いつだってぼくだ。「だめです。そんなことをしたら惑星そのものが破綻します」「それがどうした?おれたちの仕事は取り立てだ。それ以外のことなどどうでもいい」取り立て屋コンビが宇宙の果て、地獄の炎の中にまで追いかけていく。

アンドロイドの持つ暗黒網ネットワークと、人間のシステム。宇宙エレベーターに立てこもるアンドロイドの兎たちの立て籠りなど、SFならでは楽しめる仕組みです。利息が腕1本とか、にやりとさせられもします。浅く読むとそこまでで、深く読むと人間とは何かと哲学的にまで考えさせられます。情報システムはあらゆるものに必要なのだと、変なところで思い知りました。おもしろいです。

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(No.5958)エリザベス・ウェイン「コードネーム・ヴェリティ」/岩木一麻「がん消滅の罠 完全寛解の謎」

2017.05.06 (Sat)


(クレマチス:ツートンがきれいなピンク系:都内公園)

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(ベルベットのような、真紅の花びらもすてき:都内公園)

連休も明日で終わりですね。
久しぶりに植物園に行き、読書も進み、歌練も継続しました。ハンドバッグの直しを2点うまくできたと思います。ベランダの鉢植えの整理と掃除も終え、遊びのお出かけもし、充実した連休でした。

ただ親戚の子が腹痛で救急搬送され「尿膜管遺残症」との診断で、膿を取り除く処置がされました。6日間の痛みは、激痛でナイフで刺された(経験はないけど)ようで歩けないほどだったと。羽生結弦選手が2年前に痛みを2週間こらえて、GPFと全日本大会を滑りきり演技後入院したことも記憶に新しいです。「あの痛みでスケートの試合をするなんて信じられない」と。100人に3人ほどの症例だそうです。体力や精神力が極限になると、ウィルスに感染しやすくなるそうです。

今回は2作です。他に読みかけて止めたのが2作ありました。
エリザベス・ウェイン「コードネーム・ヴェリティ」
岩木一麻「がん消滅の罠 完全寛解の謎」

「コードネーム・ヴェリティ」第二次世界大戦中、ユダヤ人の女性飛行士マディと、無線技術士でイギリス特殊作戦執行部員のスパイの任務のクイーニーが、小型飛行機でフランスに飛び立つ。だが攻撃を受け墜落寸前の危機に立たされる。パラシュートで脱出したクイーニーはナチスの捕虜になった。彼女は親衛隊大尉に、尋問をやめる代わりに、イギリスに関する情報を手記にするよう強制される。その手記には、親友のマディの戦場での日々が、まるで小説のように綴られていた。

ややこしい手記に始まる長い物語は、真実みを帯びた嘘なのか曖昧なまま進行します。第二部で真実が明らかになっていきます。戦時下の過酷な状況にも関わらず、目を背けさせないストーリーのわずかな希望があります。過去の思い出が時おり、明るい青春の空気をまといます。こういう書き方もあるのかと、新鮮でもありました。結末はハッピーではないけれど、読後感はよかったです。

「がん消滅の罠 完全寛解の謎」余命半年と宣告された患者の病巣が、生前給付金を受け取った直後に治ってしまう。連続して4人もとなり、患者を担当した医師・夏目に、生命保険会社に勤務する森川から確認調査が入る。だが詐欺ではない。夏目と、友人でがん研究者の羽島が謎に挑む。政財官界のセレブたちが治療を受ける、がんの早期発見・治療を得意とし再発した場合も完全寛解に導くという病院にたどり着く。

医師と保険調査員の視点が複合的で、物語を深くしています。想定範囲内の謎というのは、明らかにミステリ読み過ぎのわたしの意見です。他の方が読むと、きっと驚きがあり、神か悪魔か審判に迷い楽しめると思います。がんで亡くなる割合が多くなっているのは、高齢化が根源にあるのでしょう。でも友人を亡くしていると、すがりつきたくなりますね。

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(No.5955)ロジャー ホッブズ「ゴーストマン 時限紙幣」/ジョン・グリーン「さよならを待つふたりのために」

2017.04.11 (Tue)


(桜_散り花:天候に恵まれず、曇り空と雨でした。でも桜は美しい。散ってなお美しい:市内)

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羽生結弦選手があこがれていたエフゲニー・プルシェンコ選手と、浅田真央選手の現役引退が報道されました。
プルシェンコ氏は自前のスケート育成施設の運営、真央さんはこれからゆっくり決めて下さい。リスタートは人それぞれ違っていいと思います。自由に羽ばたいてください。

今回は2作です。
ロジャー ホッブズ「ゴーストマン 時限紙幣」
ジョン・グリーン「さよならを待つふたりのために」

「ゴーストマン 時限紙幣」カジノの街で現金輸送車が襲われた。強盗のうち一人は現場で死亡。残る一人がカネとともに姿を消した。犯罪の始末屋である私は、カネの奪回と事態の収拾を命じられた。紙幣に仕込まれた爆薬が炸裂するまで48時間。面倒な仕事だが「私」には断れない。依頼主に借りを返さねばならないのだ。5年前、クアラルンプールで企てられた高層ビル内の銀行襲撃計画。それを無残な失敗に導いたのが「私」だったからだ。5年前のマレーシアでの大強盗作戦と、現在、カジノの街での時限紙幣追跡。2つの物語の結末は。

クライムストーリーなのに、いささかの感情の揺れを挟まず語られます。クールでスピーディーな展開が、読み応えありました。観察力、聴覚、すべてを磨いて手にした「勘」で、「ゴーストマン」消し役をこなします。金儲けより自分の矜持と、刺激、達成感で動いていきます。闇の、裏の存在さえ引きずり出してしまう力がすごいです。次作も読んでみたいです。

「さよならを待つふたりのために」ヘイゼルは16歳。甲状腺がんが肺に転移して以来、もう3年も酸素ボンベが手放せない生活。骨肉腫で片脚を失った少年オーガスタスと出会い、互いに惹かれあう。死をみつめながら日々を生きる2人は、周囲の人間にも鋭い目を向ける。「至高の痛み」を愛読するヘイゼルは、軽妙な会話や自虐ネタのやりとりでオーガスタスと親密になっていく。作者とメールできるオーガスタスを通して作者へ質問を試みるが、直接会ってなら答えると言われる。8時間のフライトでオランダに来て。

自分の体調管理と、家族との関係、医療者たちとの関係、友人たちとの関係がしっかりと浮き上がります。決して手軽な涙にせず、生きることの意味を突きつけられます。真剣に一日、いえ一秒ごとに死と対峙する気持ちに、読みながら読者も向き合うことになります。重くなり過ぎず、立派な人間だけではなく、人のすばらしさとどうしようもなさが胸に迫ります。いい作品と出会えてよかったです。

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(No.5948)アンソニー・ドーア「すべての見えない光」/シャルロッテ・リンク「沈黙の果て 上・下」

2017.03.13 (Mon)

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(イベリス・スノーサーファー:春の白の美しさに惹かれ、お迎え:ベランダ)

ようやくダウンジャケットから、春のジャケットに変わりました。
その分花粉の飛散がひどく、いままでにない軽い鬱のような症状が出ました。動くのが億劫で、歌っていても気持ちが入り込めないとか、少し変だなと思っていました。花粉症の先輩に聞くと、それは症状のひとつと言われました。納得できるものがあり、気持ちにスイッチが入りました。もう大丈夫です。

今回は2作です。
アンソニー・ドーア「すべての見えない光」
シャルロッテ・リンク「沈黙の果て 上・下」

「すべての見えない光」孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年ヴェルナーは、厳しい体罰と止めることができないことの呵責に苛まれながら腕を磨いていく。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女マリー。博物館から貴重品を移送する際、特別な伝説のダイヤモンドは模造品を3個作り、4人がばらばらに持つことになった。ひとつを持つ父とマリーはサン・マロの叔父の家に疎開する。戦時下でも引きこもりの叔父はラジオを組み立て音楽を聴き本を読む。父が連れ去られたあと、夫人と叔父はマリーに食事をさせ、本読み聞かせラジオを一緒に聞いた。誰もが過酷な戦争のもとで必死に生きていた。街の掃討作戦が行われようとした時、二人の短い人生が交叉する。

目が見えなくても生きる術を身に付けていくマリーの繊細な感覚が、伝わってくるようです。ドイツ兵として生きるしかないヴェルナーの胸に折り畳まれた思いが痛いです。貧しく誇りにまみれた戦時下の空気があり、そこに生きる人の心があります。凄惨なストーリーなのですが、美しい叙事詩を読んだような読後感があります。すごい作品です。戦争を知らない世代にたくさん読まれますように。なにか言えない空気に覆われている現代にこそ、大切にしなくてはならないもの、必要なことがそこにはありました。

「沈黙の果て 上・下」ヨークシャーの古い屋敷で春の休暇を過ごしていたドイツ人グループは3組の夫婦と子供が3人。夫たちの濃密な友人関係のもと時間は流れていた。散歩好きなイシェカが戻ると、夫と家の女主人、子供を含めた5人が惨殺死体となっていた。凶器はナイフ。楽しかったはずの休暇が一転して、恐怖に変わる。生き残ったイシェカと義理の娘。弁護士のレオン。セラピストのティムと鬱を抱えた妻のエフェリン。最近になって親戚と名乗り屋敷の相続権を主張する男。義理の娘の反抗と家出。女主人を初め、それぞれの家族が抱えていた深刻な問題が浮かび上がってくる。そして親密すぎる三人の夫たちの結びつきには驚くべき秘密があった。

支配する者と依存する者。束縛から逃れられない空気が濃密で、いたたまれなくなりました。作品は読みやすく、複雑な人間関係もしっかりと描き込まれています。ハラハラさせながらラストまで引きつけられます。うまい作家です。犯人は途中で推測できますが、独特な空気感で真実を見る難しさを感じます。それにしても三人の夫たちの秘密には、鳥肌が立ちました。後味の悪さが次作を読む気をなくさせました。

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(No.5947)佐藤究「QJKJQ」/河野裕「最良の嘘の最後のひと言」

2017.03.06 (Mon)


(バコパ・デュフーサス斑入り:ライムグリーンの斑入り葉がかわいい新顔:ベランダ)

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(マーガレット:明るい色がほっとする新顔:ベランダ)

カレンダーの進み方と、意識のズレが起きる3月です。三寒四温でまだダウンジャケットが離せなかったり、暖房なしで過ごせる日もあります。ゆづくんのレジンペンダント作成が少しづつ上達しています(自己満足)。TVドラマ「カルテット」のエンディング曲「大人の掟」を、耳コピで楽譜作成中です。松たか子と満島ひかりの声。ピアノを入れた弦楽カルテットの伴奏。転調あり、リズム変化ありの難しさです。当分手直しが続きそうです。

今回は2作です。
佐藤究「QJKJQ」/河野裕「最良の嘘の最後のひと言」
「QJKJQ」猟奇殺人鬼一家の長女として育った、17歳の亜李亜。一家は秘密を共有しながらひっそりと暮らしていたが、兄の惨殺死体を発見してしまう。直後に母も姿を消し、亜李亜は父と取り残される。何が起こったのか探るうちに、亜李亜は周囲に違和感を覚え始める。

壮絶な殺人が起こり、描写も構成もしっかりしています。ホラーではない文章で引き込まれます。順当な結末ですが、いい書き手だと思います。次作に期待です。

「最良の嘘の最後のひと言」世界的な大企業・ハルウィンが「年収8000万で超能力者をひとり採用する」という告知を出した。審査を経て自称超能力者の7名が、前日の夜に街中で行われる最終試験に臨むことに。ある目的のために参加した大学生・市倉は、同じ参加者の少女・日比野と組み、「No.1」の持つ採用通知書を奪うため、策略を駆使して騙し合いに挑む。他メンバーも組んだり離れたり騙し合いとなる。

支給されたスマホの指示で動きつつ、誰かのスマホを奪い破壊するか。入社できなくても希望額をもらうことで降りるか。さまざまな思惑で動くメンバーたちが、スマホに監視されてもいるのです。真の目的は別にあるのではないかと思わせ、スピード感のある展開でした。超能力を使い過ぎず、高感度の持てるラノベでした。人間像の深さがもっとあったら本格小説として評価したいところです。

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(No.5942)カリン・フォッスム「湖のほとりで」/宮内悠介「彼女がエスパーだった頃」

2017.02.14 (Tue)


(シクラメン:そろそろ終わりそうです、花屋さんは。エリカやサイネリアが華やか:市内)

寒さの底でしょうか。例年より風の冷たさが身にしみます。
TVドラマ「カルテット」がおもしろく、毎週見ています。会話のテンポや人物像のエッジが立っています。エンディング曲も好きです。楽譜にするのが難しい曲です。

今回は2作。
カリン・フォッスム「湖のほとりで」
宮内悠介「彼女がエスパーだった頃」

「湖のほとりで」風光明媚な、北欧の小さな村で発見された女性の死体。村の誰もが知る聡明で快活な少女・アニーだった。死体には争った形跡もなく、自殺か、あるいは顔見知りの犯行ではないかと推測された。事件は、早期に解決すると思われたのだが。

セーヘル警部が地道に村人たちに話をしていく過程を、丁寧にそれでいて伏線を一気にひっくり返すラストへとみごとに繋げています。偏見を持たずに人と会話して、相手から話させる姿勢が事件の糸を繋げていきます。人々の性格が手に取るように明らかになっていきます。落ち着いたいい作品だと思います。

「彼女がエスパーだった頃」6作の短編集です。「百匹目の火神」「彼女がエスパーだった頃」「薄ければ薄いほど」など。淡々と語る作者の視点は、超能力、超常現象を信じてはいない。ただ真実を知りたいと描き出していく。

記者のわたしが取材していく、さまざまな力や、超常現象はほんとうにあるのだろうか。次第に周囲を渦巻く人間関係や、「力」に巻き込まれていくのを、自覚しつつ流されていくように見えます。それが記者の心の中にある、なにか、によって見え方が変わっていくのです。おもしろい作品だと思いました。ただ寒々とした読後感はなぜでしょうか。

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