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(No.4564)  中山七里「追憶の夜想曲」/黒武洋「てのひらに爆弾を」

2013.12.01 (Sun)



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駅裏の小公園は、小さな男の子が三輪車で走り、後を追いかけるおじいちゃんが息を切らす、平凡な日常の風景がありました。国民が気付く前に、審議を尽くさないまま次々に法案を決めていく政治。数年後の日常がどうかわるのか、若い世代の未来がどうなるのか。「日本の崩壊」がひしひしと感じられます。

ホームページ設立から14年目に入ります。ブログ、twitter、と新しいコンテンツを加えながら、読書日記だけは続けてきました。体調不良で離職、治療を続けてきた1年間で読書68作は、通勤読書よりあきらかに量が半分になりました。週に2〜3作が1〜2作になったのですものね。去年までは浴びるようように読書をし、次々に読みたい本を読んでいたのは、いたたまれないストレスから目をそらす絶好の手段でもあった気がします。
時間があるはずのいま、逆に読みたい本リストが長くなっていくのが、読めなくなるのではないかと微かな不安につながります。でもそれは気にしても仕様のないことです。おもしろい作家と出会い、本と出会っていけたらいいのであって、量の問題ではないかも知れません。

先週の2作。
中山七里「追憶の夜想曲」
黒武洋「てのひらに爆弾を」

「追憶の夜想曲」御子柴(みこしば)は、豪腕だが依頼人に高額報酬を要求する「悪辣弁護士」で知られていた。その御子柴が突然、夫殺しの容疑で懲役16年の判決を受けた主婦・津田亜季子の弁護を申し出た。因縁の相手、岬検事を驚かせる。亜季子の夫・伸吾はリストラに遭い、部屋に閉じこもりにわかに株の投資を始め、退職金を失い借金を作ってしまった。亜季子は娘二人をパート仕事で支え、義父・要蔵が時折訪ねてきて手助けをしていた。第二審が始まり、御子柴は驚くべき調査で弁論を繰り広げる。

法廷ものにありがちな論争だけではなく、弁護士はもちろん、検事、家族の一人一人の人物像の内面を強烈にあぶり出していきます。裏付けに奔走するやり方も、清濁併せ持つ御子柴ならではのものがあります。次々にひっくり返していく事件の真相は、最後のどんでん返しまで読者を引きつけて離しません。おもしろく、そして重いテーマを印象付けます。御子柴の内面が初めて明かされます。ただどうしても類型的な犯行と見えてしまう、ミステリの読み過ぎの読者であり、亜季子のある症状に似た感覚があるわたしは、途中でわかってしまう部分が残念です。

「てのひらに爆弾を」都心で市民を狙った爆弾事件が発生した。爆弾が仕込まれたのは携帯電話だった。所轄署から警視庁捜査一課特殊班に移った城辺直秀にとって、初めての事件だ。犯人は各携帯電話会社に「身代金」を要求するが、その後、動きを止めてしまう。狙いは何か。一方、就職がうまくいかずアルバイトをしていた奈央は、公園で昼寝をしていた老齢の男セイジンと、熱中症になりかけた少女のラムと知り合う。奈央はナオピーチと名乗り、虐待の傷跡を持つラムを救おうと動き出す。

意図はわかるし、展開も複雑な人間関係の処理もうまいです。ただ微妙な違和感がありました。携帯の規制やメディアの注目を集めても、それで根本問題はなにひとつ解決しない、社会や人間の心の構造はどうするのか。犯人たちの自己満足に過ぎないのではないかと、感じてしまいます。個人個人の力を合わせて、などという理想の言葉などたちまち吹き消されてしまう現状があります。作品の中ではそこまでの深さはなかったと思います。この題材が、小説としての限界かも知れません。

「Book」読書日記に、作家ごとの感想があるので、見てくださいね〜♪

(写真:サザンカ=山茶花:紅色が満開がみごとです。通勤線路脇の垣根:市内)
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