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(No.4802)  村上龍「オールド・テロリスト」

2015.08.08 (Sat)


(モミジアオイ:真っ赤なルージュは、戦う証でしょうか:市内)

立秋。カレンダーとは別に、真夏日、猛暑日がほぼひと月続いています。
じっとこもっていると楽だけれど、少しでも外出したりコーラスに参加した方が体の調子はいいようです。駅まで徒歩15分が靴底からの熱さと空気の熱さでくらくらします。最近はわずか3停留所をバス移動です。発着場所を初めて把握しました。無理はせず、でも歌っている時が心から楽しく感じます。

村上龍「オールド・テロリスト」
福島の原発事故から7年後、フリーライター・セキグチも40代後半だが、週刊誌は売れなくなり仕事を失い、充実感を失い、家族を失い、誇りを失い、ほぼホームレス状態だった。不安になると精神安定剤や睡眠導入剤を、酒とともに常用し寝落ちする。予告テロ事件が相次いで起き、なぜかセキグチは命がけの取材をするはめになる。商店街で知った書道教室で、魅力的で不思議な女性カツラギと出会った。アメーバ的な老人たちの組織の、リーダー格のミツイシとの接触がセキグチを更に深みへと追い込む。

新幹線車内での炎上自殺が起きた現在、村上さんはどんな視点で見ているのだろうと気になって読みました。現実に起こりうる事件で恐怖に捉えられ、流されていく情けないセキグチを容赦なく描いています。精神科医アキヅキとの奇妙な会話、ミツイシとの会話、消え入りそうな細いつながりが、かろうじてセキグチを老人たちと向かい合わせます。けれど満州国、対戦車砲、発射実験と矢継ぎ早の老人たちには、おそろしいほどのリアリティがあります。彼らの静かな怒りの前で、嘔吐し動けなくなるセキグチがいまのわたしたちでしょう。包囲され排除される老人たちが、ラストでにやりとした表情のしたたかさはかすかな希望を残したと思います。的確な現実への切り込みですが、現実は小説より更に速度を上げて進んでいます。アメリカへのゴマすり戦争法案が国会で成立しそうな、危うい時期です。村上さんはどこまで現実のスピードに食らいついてくれるでしょう。

「Book」読書日記は作家ごとの感想です。よかったらどうぞ〜♪
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