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(No.5906)中村文則「私の消滅」「銃」「掏摸」「王国」

2016.09.03 (Sat)


(カラミンサ:ハーブは小さなお花が多いですね:公園)

8月に感想をアップできませんでした。
さすがに歌の発表会がプレッシャーだったようです。感想が書けていないものがあと4作あります。
今回は4作。
中村文則「私の消滅」「銃」「掏摸」「王国」
「私の消滅」一行目に不気味な文章が書かれた、ある人物の手記。「このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない」それを読む男は、重度の鬱病の女性を診察をした精神科医だった。

精神科医の「僕」は小塚という新しい身分を手に入れ、早く逃げなければと思いつつ手記を読んでしまいます。そこに手紙が届き男に拉致され、病院に連れて行かれます。精神科医が患者の精神部分に入り込むという、催眠療法から先が踏み込んで描かれています。自分のアイデンティティが揺らいでいく過程が、本人が気が付かないうちに進むのが怖いですね。引き込まれる作家です。

「銃」雨が降りしきる河原で大学生の西川は、死体の傍に落ちていた銃を目にする。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになる 。

デビュー作です。まったくの偶然から銃を手に入れてしまった私は、日常が徐々に変化していきます。意識していなかったものへの憎悪が沸き上がる瞬間。地道な警察の捜査という社会を遮断し、深く深く自分を掘り下げていく作家に、久々に出会いました。ハマりました。

「掏摸」東京を仕事場にする天才スリ師。万引きをする幼い男の子を見かけ、庇ってしまう。指示した母親は最低の暮らし、考えをしていた。男の子に生き方を伝える。僕は「最悪」の男・木崎と再会する。かつて仕事をともにした闇社会に生きる木崎が、僕に囁く。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げればあの母子を殺す」。ひとつ目は裕福な独居老人宅の強盗。二つ目は書類をダミーと交換すること。そして三つ目は。運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。

構成も闇社会を知って書き切っているのがすごいです。引き込まれて読みました。女性が類型的なのは、作者の若さのせいで止むなしでしょう。猛禽類の五感と目を持った、鋭い作品です。

「王国」ユリカは男とホテルに入り、薬で眠らせ写真を撮って出て行く。組織によって選ばれた、利用価値のある社会的要人の弱みを作ることがユリカの「仕事」だった。かつて同じ施設にいた長谷川にデータを渡す。木崎という男の後を歩いていると、人ごみの中で見知らぬ男から突然忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい。化物なんだ」。不意に鳴り響くホテルの部屋の電話。ユリカに語りかける男の声。「世界はこれから面白くなる。あなたを派遣した組織の人間に、そう伝えておくがいい。そのホテルから無事に出られればの話だが」ユリカの逃亡劇が始まる。

自分以外を信用してはいけない闇の世界に、一気に引き込まれます。暗闇の中を自分の考え得る方法で、切り抜けていきます。ただ組織はあまりにも強大です。人生って誰かが設計した通りにしか、生きられないのかと考えると絶望的な気持ちになります。けれど希望があるのです。そこに救いがあります。

「Book」読書日記は作家ごとの感想です。よかったらどうぞ〜♪
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