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(No.5939)逸木裕「虹を待つ彼女」/貫井徳郎「愚行録」/S・M・ハルス「ブラック・リバー」

2017.01.24 (Tue)


(スリナムゴウカン:寒い時期に咲く花は貴重ですね:温室)

大寒が過ぎ、いくらかでも春に近づいてほしいです。
本を夢中になって読む楽しさは、ほかには味わえないものですね。寒い日、エアコンの効いた部屋で読めるのはうれしいです。

今回は3作。
逸木裕「虹を待つ彼女」
貫井徳郎「愚行録」
S・M・ハルス「ブラック・リバー」

「虹を待つ彼女」2020年。人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。6年前、自作の「ゾンビを撃ち殺す」オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、自らを射撃の標的にして自殺を遂げていた。晴を調べるうち、彼女の人格に共鳴し次第に惹かれていき、やがて彼女に「雨」と呼ばれる恋人がいたことを突き止める。だが「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが。

初作家でした。感情さえコントロールしている工藤の存在に、妙な共有感を持ってしまいました。論理的に展開していくストーリーに引き込まれます。囲碁の人間対人工知能を巡るメディアとの関係。人工知能と対話する中で離婚を勧められたとクレームが入り、会社での上部の思惑や人間関係。対人間より、死者の友人たちに聞く、晴の像作りに夢中になっていく過程もおもしろいです。未知の領域を知りたいというあくなき研究者の思いの高さと、「恋愛感情」にのめり込み過ぎる点が性格が変わってしまったような印象を受けます。少し俗的表現に終わった部分を崩したのが残念な気がします。他の作品も読んでみたいです。

「愚行録」幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家4人が惨殺された。隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる、「事件」と「被害者」。理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。

関わった周囲の人へのインタビューして集められた証言。隣人。付き合いのあった家族。などで、次第に被害者と加害者をあぶり出していくスタイルです。4章から、ふいに深い部分が姿を見せ始めます。住宅地の用地買収、会社の卒業大学の派閥、その家族たちの付き合い、その中に殺人に至るほどの憎しみを抱いていく過程から結末まで。みごとに構成された作品です。貫井さんの作品は長いのでデビュー作しか読んでいませんでしたが、いい作家ですね。

「ブラック・リバー」「わたしのためにフィドルを弾いて」病で最期が迫った妻からの願いを、六十歳の元刑務官ウェズはかなえられない。刑務所の暴動で負った凄惨な傷のせいで。妻が逝きウェズはその刑務所の町、ブラック・リバーへ旅立つ。妻の連れ子との十八年ぶりの再会と、暴動の首謀者の仮釈放を決める公聴会での証言が待つ町へ。

フィドル(ヴァイオリン)を弾くことが男同士の繋がりで、息子や才能のある男に引き継がれていく時代の描き方が生き生きとしています。それと同時に元刑務官ウェズへの、残酷な暴力もすさまじさが実感されます。その暴動の首謀者の仮釈放されるかも知れないと聞き、たまらずに公聴会に向かいます。深いところの人間愛を、日常を淡々と描くことで心に突き刺さってきます。うまい作家です。

「Book」読書日記は作家ごとの感想です。よかったらどうぞ〜♪
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