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(No.5948)アンソニー・ドーア「すべての見えない光」/シャルロッテ・リンク「沈黙の果て 上・下」

2017.03.13 (Mon)

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(イベリス・スノーサーファー:春の白の美しさに惹かれ、お迎え:ベランダ)

ようやくダウンジャケットから、春のジャケットに変わりました。
その分花粉の飛散がひどく、いままでにない軽い鬱のような症状が出ました。動くのが億劫で、歌っていても気持ちが入り込めないとか、少し変だなと思っていました。花粉症の先輩に聞くと、それは症状のひとつと言われました。納得できるものがあり、気持ちにスイッチが入りました。もう大丈夫です。

今回は2作です。
アンソニー・ドーア「すべての見えない光」
シャルロッテ・リンク「沈黙の果て 上・下」

「すべての見えない光」孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年ヴェルナーは、厳しい体罰と止めることができないことの呵責に苛まれながら腕を磨いていく。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女マリー。博物館から貴重品を移送する際、特別な伝説のダイヤモンドは模造品を3個作り、4人がばらばらに持つことになった。ひとつを持つ父とマリーはサン・マロの叔父の家に疎開する。戦時下でも引きこもりの叔父はラジオを組み立て音楽を聴き本を読む。父が連れ去られたあと、夫人と叔父はマリーに食事をさせ、本読み聞かせラジオを一緒に聞いた。誰もが過酷な戦争のもとで必死に生きていた。街の掃討作戦が行われようとした時、二人の短い人生が交叉する。

目が見えなくても生きる術を身に付けていくマリーの繊細な感覚が、伝わってくるようです。ドイツ兵として生きるしかないヴェルナーの胸に折り畳まれた思いが痛いです。貧しく誇りにまみれた戦時下の空気があり、そこに生きる人の心があります。凄惨なストーリーなのですが、美しい叙事詩を読んだような読後感があります。すごい作品です。戦争を知らない世代にたくさん読まれますように。なにか言えない空気に覆われている現代にこそ、大切にしなくてはならないもの、必要なことがそこにはありました。

「沈黙の果て 上・下」ヨークシャーの古い屋敷で春の休暇を過ごしていたドイツ人グループは3組の夫婦と子供が3人。夫たちの濃密な友人関係のもと時間は流れていた。散歩好きなイシェカが戻ると、夫と家の女主人、子供を含めた5人が惨殺死体となっていた。凶器はナイフ。楽しかったはずの休暇が一転して、恐怖に変わる。生き残ったイシェカと義理の娘。弁護士のレオン。セラピストのティムと鬱を抱えた妻のエフェリン。最近になって親戚と名乗り屋敷の相続権を主張する男。義理の娘の反抗と家出。女主人を初め、それぞれの家族が抱えていた深刻な問題が浮かび上がってくる。そして親密すぎる三人の夫たちの結びつきには驚くべき秘密があった。

支配する者と依存する者。束縛から逃れられない空気が濃密で、いたたまれなくなりました。作品は読みやすく、複雑な人間関係もしっかりと描き込まれています。ハラハラさせながらラストまで引きつけられます。うまい作家です。犯人は途中で推測できますが、独特な空気感で真実を見る難しさを感じます。それにしても三人の夫たちの秘密には、鳥肌が立ちました。後味の悪さが次作を読む気をなくさせました。

「Book」読書日記は作家ごとの感想です。よかったらどうぞ〜♪
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